まず「フィガロの結婚」ってどんな話??というところから。
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舞台はスペインのセビリア。
アルマヴィーヴァ伯爵に使えるフィガロとスザンナは結婚を控えている。
浮気者の伯爵はパワハラ&セクハラで、嫁入り間近のスザンナを我が物にしようとする。
「伯爵けしからん!」
…ということで、フィガロとスザンナは伯爵夫人ともグルになり、あの手この手の作戦を練って伯爵を懲らしめる。
最後は伯爵が夫人に許しを請い、仲直りしてハッピーエンドとなる。
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難しくするとどこまでも難しくなるけれど、
超大ざっぱで簡単にまとめるとそんなお話です。
そんな伯爵がスザンナに行使しようとする“パワハラ”が「初夜権」というもの。
「フィガロの結婚」の作品解説やあらすじを読むと
“伯爵は自らが廃止したはずの“初夜権”を復活させてスザンナに行使しようとする”
と出て来て、分かるようで分からず、フワッとしたかんじになります。
さて、この「初夜権」とはなんでしょう?
「初夜権」は元々ローマ時代の法律なのだそうです。
それも、古代の小領主が下々の物に課した一種の「税金」。
当時、領主に使える人達は領主の持ち物同然でした。
その為、結婚するにも許可がいるし、税金を払って結婚していたそうです。
そして、その税金を払えなければ、花嫁は領主に処女を捧げなければならない!!
なんてこった!!です。
ただ、ローマ時代の古代の領主は、キリスト教ではなく“一夫多妻制”。
何人も自分の好きに出来る女の人がいるのだから、わざわざ人の花嫁を犯す必要は無かったはずです。
そのあたりのことを考えると、
当時の“初夜権”は花嫁を犯す目的ではなく、
あくまでも「租税」だったとのこと。
「税金を払わなきゃ銀行口座を差し押さえるぞ!」
というのが今の日本ですが、
「花嫁を犯されたくなければ税金を払え!」
という、何とも荒っぽい手口だったわけですね。
中世になり、キリスト教の見張りが強くなると、“初夜権”が法律として行使されるようなことは無くなったそうですが、
封建領主の中には“花嫁を犯すこと”を目的に権利を悪用する人も居たらしい。
特に南フランスの一部とイタリアの国境に近い山中では、農民の無知につけこんで権利を行使していた公職領主がいたのだとか…。
「フィガロの結婚」のアルマヴィーヴァ伯爵が、初夜権を行使しようとするのは、もちろん“税金の取り立て”ではなくスザンナを物にしたいだけだし、時代を考えると、伯爵って田舎者なのかな?と。
そもそも、このアルマヴィーヴァ伯爵は、数年前、自分が惚れたロジーナ(現在の伯爵夫人)と結ばれる為に、散々フィガロの力を借りて結婚に至りました。
その際に自らが初夜権を廃止しています。
…にも関わらず、奥さんに飽きてきたら他の女に手を出すために、この権利を引っ張り出してきた訳ですね。
フィガロが怒るのも無理は無い。
その辺のくだりを、作品の中では1幕2曲目の「ディンディン ドンドン」の二重唱の後の長いレチタティーヴォでサラッと説明しています。
(ここのレチタティーヴォが難しいんだなぁ…。笑)
そんなこんなで、知ってるとちょっと面白い「フィガロの結婚」まめ知識でした。
本番まであと7日!!
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参考文献:
永竹由幸
新潮オペラブックス フィガロ伯爵
金子一也
オベラ「フィガロの結婚」のことが語れる本
藤原歌劇団ソプラノ 楠野麻衣