ランスへの旅〜デリア〜

藤原歌劇団本公演「ランスへの旅」本日幕が開きます。

 

オペラ歌手育成部を終了して団員になったのが2012年。

2015年にデビューで使っていただいた「ランスへの旅」に続いて2度目の本公演です。

モデスティーナからデリアになりました。

 

モデスティーナはファッション狂いのフランス人、フォルヴィル伯爵夫人の侍女でちょっとおバカな役。楽譜上の指示はメゾ・ソプラノ。

デリアはローマの著名な女流即興詩人コリンナに保護されている若いギリシャ人の孤児で旅のお供。ソプラノです。

デリアが一人で歌うのはレチタティーヴォの「davver」と「Il ciel lo voglia」の二言だけ。

(しかも有名な録音ではカットされて言わせてもらえないこともあったり)

アンサンブルでは内声でモデスティーナとハモったり、コリンナと同じ音を歌ったり。

自己主張するところがあまりなく、楽譜上から拾える情報が少ない、ミステリアスな人。

 

でもいつもコリンナにくっついている彼女が、14重唱の終盤では唯一コリンナを差し置いて、コルテーゼとフォルヴィルと同じ、一番上の音を歌っているところがあり、なぜロッシーニはそういう書き方をしたのかなと思うと、やっぱりデリアの若さや無邪気さのテンションなのかな、とか。

 

あまりに主張するところが少ないので、変なことしてなければ基本ダメ出しもされない。

自分がやってることはこれで良いのか?と自問自答しながらやっていくしかない孤独なところでもあります。笑

脇の役割をうまく務めるのは難しい。

無でもいけないし、動きすぎるのは目にうるさい。

モデスティーナは“動”の役だったけど、デリアは“静”の役。

静の役を魅せるには、自分自身がどう動いてどう主張するかより、他の人達との接し方、リアクションでどういう人物かを表現するしかないのかな。

デリアとの関係性でコリンナの人が見える。

 

今回の稽古中も先輩方から色んなお話を聞かせていただきましたが、

いつも脇を素敵に固めていらっしゃる先輩が、

「舞台の上は自己中心的に頭で考えて動かずに、ただその場で生きれば良い」

と仰っていたのが素敵でした。

 

 

稽古期間を通して、一線で活躍されている人たちと自分の間にある隔たりが何なのかを考えて、感じて、圧倒される愛しき日々でした。

本日14時、新国立劇場でお待ちしております。

◆公演の詳細はコチラから

 

藤原歌劇団ソプラノ 楠野麻衣

 

※写真は日本オペラ振興会公式ページより転載