オペラ歌手の楠野麻衣です。
前回のブログでは、三味線奏者の常磐津齋櫻さんの魅力について書きましたが、今回は常磐津齋櫻三味線教室での体験レッスンについてのレポートです。
体験レッスンは手ぶらでOK
三味線のレッスンは今回は初めてで何も分狩りませんでしたが、予約の時に丁寧に教えてくださいました。
- 必要なものは貸出しがあるため準備物は特になし
- 座ってレッスンとなるため、パンツ・スカート共にタイトなものは避けた方が身体が楽であること
- お教室までの行き方(地図付き)
ちなみに私はワンピースで受講させていただきました。
写真提供:常磐津齋櫻事務所
構えかたに苦戦…
レッスンでは、お稽古用の三味線をお借りできます。
畳に置いた状態から三味線の正しい持ち方、構え方をご指導いただきました。
右太ももに三味線の胴を置き、右腕を胴の上から被せて、楽器を正しいポジション、角度に保ちます。左手を添えなくても天神という三味線の先の部分が肩上まで上げるそうなのですが、なかなかうまくいきません…
齋櫻先生が「大体構えるときに右腕にかかっている力はこれくらいですね」と実際に押されてびっくり!
思わず「え?!三味線構えるのってこんなに力が必要なんですか!?」と聞いてしまいました。
三味線奏者さんたち、楽に構えているように見えますが、かなり体幹よく力強く支えてらっしゃいます。
私も真似してみましたが、数分間で腕がプルプルしてきました。笑
楽器奏者は支え方色々
少し話が脱線しますが、私は中学校時代にバリトンサックス、大学時代にクラリネットの経験があります。
バリトンサックスは楽器にストラップをつけて首からぶら下げて演奏します。
楽器の重さは約6キロ。
私は中学3年間、2リットルのペットボトル3本分の重さの楽器をを毎日首からぶら下げて数時間練習していたわけです。(腹筋と背筋はそのあたりでも鍛えられた気がします。)
肩こり激しかったです。笑
↑これがバリトンサックス。低音楽器も楽しかった。
大学進学後は、副科でクラリネットを選びました。
バリトンサックスの重さを知っていた私からすると、クラリネットなんて軽いもの。実際1キロくらいです。
しかしクラリネットはストラップをつけませんので、右手の力だけで支えることになります。穴を抑えず全ての指を解放して吹く音は、右手の親指一本と口だけで支えます。
これはなかなか力が必要で、クラリネット奏者は右手の親指にクラリネットだこが出来ます。
(ちなみに私はタコが出来る程まじめに練習していませんでしたが、肩はこりました。笑)
↑クラリネットは角度で音程変わったりもします。繊細。
涼しい顔をして支える奏者たち
何が言いたいかというと、何の楽器であれ「楽器を演奏する」というのは、どこかしらには負荷がかかる結構大変なことです。プロの演奏家は、それを聞き手には感じさせない、涼しい顔で演奏しているわけですよね。
水面下の白鳥のごとく。
ちなみに歌い手も声を支えます。これも少しずつ少しずつ、身体という楽器を何年もかかって育て上げ、やっとできる作業です。
地道な努力が奏でる音の美しさにつながっていくわけです。
写真提供:常磐津齋櫻事務所
「調子」を合わせる
西洋音楽では、演奏を始める前に「チューニング」という作業があります。
三味線の場合は、基本の弦の音を決めて、その他の弦との音程の関係性で合わせるそうです。それぞれの弦の音の高さの関係を「調子」といい、「調子」には「本調子」「二上がり」「三下がり」などのパターンがあります。
音と音との間隔が合っていればいいという決まりがあり、高さは歌い手さんに合わせて変わるとのことで、西洋音楽でいうと「移動ド」的な考えですね。
歌手目線で見ると、歌い手の声の調子に合わせて楽器の高さを調節してもらえるなんて、ありがたい仕組みです。笑
写真提供:常磐津齋櫻事務所
三味線って繊細
お稽古が始まる前に齋櫻先生が調子を合わせて下さいましたが、レッスンしている間にどんどん弦の音が下がっていきました。
ギターのチューニングが狂う時間の比にならないくらい、早いです!
やはり三味線は生きている楽器ですね。
暑さ、寒さ、湿気などの影響でどんどん状態が変わっていくので、ステージで演奏する時もマメに調子を合わせながら演奏するそうです。
時には照明の熱で楽器の皮がパーンと破れるようなアクシデントも実際にあるのだとか。ステージでそんなことになったら泣きます…。
写真提供:常磐津齋櫻事務所
曖昧であることの美
チューニングを442HzなどHz単位で合わせて、淀みなく狂いなく進めていく西洋音楽とは違い、三味線の音、日本の音楽の中には何とも言えない「揺らぎ」が存在します。
西洋音楽畑の人間からすると、ハッキリしないところに気持ち悪さを感じないこともないですが、やっているうちに、その曖昧さが楽しく、心地よさもあり、「曖昧であることの美徳」を感じました。
知らず知らず、自分の日本人としての血の中に和の音が染みついているのかもしれません。
写真提供:常磐津齋櫻事務所
楽器購入が不安な方は「レンタル」の選択肢も有り
「興味はあるし習ってみたいけれど、三味線っていくらくらい…?」
「楽器を買って、お稽古を始めても合わなかったらどうしよう…」
など、心配される方もいらっしゃると思いますが、最近は三味線のレンタルという選択肢もあるそうです。
楽器選びについても齋櫻先生が相談に乗って下さるとのことでした。
写真提供:常磐津齋櫻事務所
オンライン対応可能、うとい方でも心配無用!
新型コロナの感染防止ということもあり、常磐津齋櫻三味線教室ではオンラインレッスンも対応しているとのこと。
生徒さんはそれぞれで、マイクやカメラのご用意が難しい方もいらっしゃるため、究極は「電話」だと仰っていたのが印象出来でした。
構えている様子を見なくても、出ている音さえ聴けばどういう弾き方をしているのか分かります
と仰るのです。(さすがプロ!かっこいい!)
撮影した動画を送ったり、やり方はいくらでもあるため、生徒さんによって対応してくださるそうです。
オンラインレッスンはよく分からない…と二の足を踏んでいる方でも、一度ご相談されるといいと思います。
写真提供:常磐津齋櫻事務所
本格的に舞台を目指す人にはかなりオススメ
齋櫻先生の場合、もちろん初心者から教えていただけますが、本格的にステージに立ちたいと思って高みを目指される方には、舞台の出演機会も与えて下さるそうです。
「簡単に始められてどこまでも上に向かえる」って素敵ですよね。
最後に、この体験を通して
一言に「三味線」といっても、ジャンルがたくさんあること、三味線を支えるためには外から見ただけでは分からない力が必要であること、気づきの多い時間でした。
そして、入口は広く、ただし守るべきスタイルや格式はしっかりと守りつつ、高みを目指す人には開けた世界に導いてくれる。そんなスタイルの教室づくりにとても共感を覚えました。
外の世界から三味線の世界に飛び込んだという人生経験を持ち、視野が広い常磐津齋櫻さんだからこそ出来る取り組みかと思います。
たった一日の三味線体験でしたが、単なる楽器の演奏だけではなく、常磐津齋櫻(ときわずさいおう)という人の魅力に触れ、「心」を学んだ数時間となりました。
ご興味がある方はこちらからお問い合わせください。
東京・銀座、人形町の三味線教室
常磐津齋櫻三味線教室
TEL→090-3807‐4051
オペラ歌手 楠野麻衣