2019年のブログは1年間の振り返りで終わりにしようと思ったのですが、どうしても書き残しておきたいことを最後に一つ。
10月の《プレミアムコンサート大島公演》のことです。
10月21日〜23日にかけて、東京都交響楽団の弦楽四重奏の皆さんと一緒に、船に乗って伊豆の大島へ行きました。
ちょうど台風が迫っている時期で、コンサートが開催できるかどうかが分からない状況。
もし出来ないのであれば、島に着いたその日にすぐ帰らなければ、海が荒れて船が欠航になり、東京には帰れなくなる。
色々と検討の末、「少しでも開催できる可能性があるのなら、島に留まろう」という結論に。
(↑少し観光に連れて行って頂きましたが、真っ白でした)
ちょっと歩いただけで傘が壊れるような暴風雨の中、本番前日の会場リハーサルを終え、あとは当日のお天気を祈るばかりでした。
幸いなことに、台風は温帯低気圧に変わり、お天気も改善の見込みとのことで、当日の朝の時点でコンサートの開催が正式に決定。
(会場の緞帳には大島椿が描かれ美しかった)
雨はおさまってきたとはいえ、風はまだまだ強かった。
会場の控室から見た島の光景は、ぽつりぽつりと民家の屋根にビニールシートが被せられ、千葉の時の台風で受けた被害が痛々しく残っていた。
こんなにドタバタな時期に果たしてお客様は来て下さるのだろうかと不安でしたが、そんな心配をよそに、2公演ともに80名くらいの島の方が集まって下さいました。
「となりのトトロ」の“さんぽ”を歌いながら客席を練り歩いて子ども達に歌いかけると、恥ずかしそうにしながらもニッコリと笑ってくれて可愛かった。
(コンサート翌日は快晴。)
常々「私が音楽家、演奏家として生きていくことが世の中の何の役に立つのだろうか?」と自問自答しながらの生き方ではありますが、島の皆さまが涙を流して「よかった」と言って下さる姿を見ると、音楽が人の心に投げ掛ける力の偉大さに感動しました。
そして、まだコンサートの開催の可否が分からない段階の時、
「もし予定通りの公演が出来ないのであれば、保育園や介護施設で数曲だけでも演奏することは出来ないだろうか?」
「せめて子ども向け公演1公演だけでも出来ないだろうか?」
どうにか島の人達に音楽を届ける方法はないかと意見を出し合う団員の皆さまの想いに胸打たれました。
真摯な心を持った方達とご一緒できることは、この上なく幸せです。
日頃、歌い手さんと関わる機会は多いですが、オーケストラで活躍される皆さまのお話は新鮮な事ばかりで良き刺激になりました。
この時にご一緒させて頂いた弦楽四重奏のメンバーの皆さんは、12月の音楽鑑賞教室にも全員乗っていらして、そこで約2ヶ月間ぶりの再会…!
みなさん温かく迎えて下さり、とっても嬉しかったです。
またソリストとして皆さんとご一緒させて頂けるよう、励んでいこうと思います。
大島は美しい島で人々もあたたかく、
音楽と愛と思いやりに満ちた数日間でした。
今度はプライベートで遊びに行きたい♪
来年もあんな方達、あんな公演にたくさんで会えますように。
日本オペラ振興会 藤原歌劇団
ソプラノ 楠野麻衣